『寒気団団員募集』
(給与) 日給一万円(昇格に応じて手当てあり)
(期間) 十一月中旬頃〜二月末頃
(休日) 小春日和
(資格) 不要。ただし足腰が丈夫な方。
寒気団の団員を緊急募集。
寒気団とは、その名の通り、寒気の集団です。
寒気団がその地を通りすぎることによって、
動物たちは冬ごもりをはじめ、
電気屋の店頭にはストーブやホットカーペットが並び、
自動販売機に「あたたか〜い」のコーナーができるのです。
人間のみならず、生き物全体の生活環境を変える、
重要な任務であることを認識してください。
寒気団団員数は、およそ千人。
採用された人数、団員の団結力、腕っぷしの強さによって、
その年の寒さが決まってきます。
寒気団の団員になったあかつきには、
まずフェリーでシベリアに渡り、研修を行っていただきます。
期間は三週間。
一週目は団員全員の自己紹介、
二週目は基礎体力づくり、
三週目は、寒波の波に乗る練習です。
万が一、この波に乗れなかった場合は失格となり
交通費のみの支給となりますが、
現地のエキスパート「亜寒隊」が
手取り足取り指導致しますのでご安心ください。
寒波に乗るテストに合格後、
正式に団員となった証として、
スタッフジャンパーが配付されます(買い取り制 一着千円)。
準備が整ったところで、さっそく寒波に乗って北方領土を抜け、
北海道を皮切りに日本列島を南下していただきます。
ただ波に乗っていればいいというわけではありません。
全国ところどころに居座っている暖気団たちを
力づくで追いやるのも仕事のうちです。
暖気団も発足時はおよそ千人ですが、
涼しくなってくると団結力が弱まり、
コンビニ前などに五、六人ずつでたむろするようになります。
ランニングに短パン、サンダル姿で、
必ずといっていいほど「ガリガリくん」というアイスを
食べていますので、一目瞭然です。
追いやる方法は、
ガンのとばし合い、口ゲンカ、素手によるケンカの三段階。
向こうがトリ肌を立てればこちらの勝ち、
こちらがジャンパーを脱いだら負けとなります。
研修でマニュアルを配りますので、
各自でトレーニングを行ってください。
寒気団は、年ごとにオーディションを行います。
勤務中の食事、宿泊、生活必需品の緒費用は当方で負担致しますが、
春、夏は特にすることはありませんので、
別の仕事を探してください。
冬の最後には、団員の投票により、
翌年の「冬将軍」が決まります。
選定基準は、暖気団を倒した数、懐の深さ、
酒の強さ、泣かした女の数など、さまざまです。
冬将軍は専用のワゴン車に乗り、
天気図を考慮しながら、
寒波の温度、進路、スピード等を決め、
拡声器を使って「全員、気圧配置につけ!」との号令を下します。
休日も冬将軍の一存で決めることができ、
その日が「小春日和」となります。
一見楽なように思われるかもしれませんが、
ときに下克上もありえますので、油断は禁物です。
冬将軍のいちばんの仕事は、
冬の終わりから春のはじめにかけて行われる
「冬将軍 対 春一番 スペシャルマッチ」。
四角いリングの上で、もちろん素手の勝負です。
闘いに勝つほどに冬が長くなり
団員たちの給与も増えるわけですから、
重要な任務となります。
給与は、ヒラ団員の倍ほどの金額になりますが、
春、夏はやはり仕事はありません。
(備考)
・暖気団との掛け持ちはお断りいたします。
・気象衛星によって、四六時中監視されますので、
プライベートはほぼないものとお考えください。
・特典として、「気圧の谷ツアー」二泊三日の旅をプレゼント致します。
カバのような妖精一族がハバをきかせ、
人相の悪い小人や陰湿な旅人が暮す薄暗い谷です。
パスポートは不要ですが、ガイドブックや辞書などはありませんので、
自力でお楽しみください。
書き手 山田