『赤い羽根調達』
(給与)なし
(期間)未定
(経費)自腹
(詳細)
もう普通のボランティアにはあきてしまったあなた。
キング・オブ・ボランティアと称される
究極のボランティアを経験してみませんか?
ボランティアが大好きなあなたなら、
一度は胸につけ、笑顔で配ったこともあるであろう赤い羽根。
胸元にそよぐ赤い羽根は、共同募金をした証であり、
人としての価値をグッとアップさせる貴重なアイテムです。
その赤い羽根を調達する、というのが今回のお仕事。
共同募金用の赤い羽根は、
南米奥地のジャングルに生息する
幻の鳥獣“ボラン・ティアラ”の羽根が使用されています。
それを捕まえ、羽根をむしりとり、
日本に持ち帰っていただきたいのです。
ご希望の方は、
まず国内にあるボランティア協会本部に来ていただきます。
そこで現地までの地図をお渡ししますので、
その足で空港に向かってください。
目的地は、鳥獣が生息するジャングルにひとつだけある、
人口三十人ほどの小さな村。
空港から列車とバスを乗り継いで約30時間、
そこから徒歩12時間ほどの所にあります。
交通費は自己負担です。
特にアポイントメントはとってありませんが、
食べられることはないので安心してください。
真っ先に村の長に会いにいきます。
村の長は、頭のてっぺんに例の赤い羽根を刺していますので、
すぐに分かります。
村の長に“ボラン・ティアラ”と告げると、
得体の知れない飲み物を差しだされます。
躊躇せず一気に飲み干してください。
これで交渉成立です。
“ボラン・ティアラ”は、毎日狩りをする村の人々でも、
年に一度見るか見ないかの極めて珍しい鳥獣です。
体長は大きいもので八メートル。
ダチョウのような体つきに、
シカのような端正な顔立ち、
ツノが二本生えています。
空は飛びませんが、
本気で走ると時速六十キロほど出ます。
大量の真っ赤な羽根におおわれていて、すべてむしりとると、
日本で使用される約一年分の赤い羽根の量に相当します。
胸のあたりには白くて四角い模様があり、
それが募金箱の由来だとも言われています。
“ボラン・ティアラ”は、日本語に訳すと“無償の愛”。
村では神の使いと信じられており、
さまざまな言い伝えがあります。
村の子供が崖から落ちたとき、飛べもしないのに身を投げ、
先に落ちたボラン・ティアラの羽根がクッションとなり助かった、とか、
ボラン・ティアラの羽根にインクをつけて文字を書こうとしても
「愛」という言葉しか書くことができない、
など、語りだすときりがありません。
そんな神の使いを傷つけることは許されないので、
銃は使用できません。
矢もダメ、縄もダメ、石もダメ。
方法は、体当たり、のみです。
ジャングルの中は村の青年たちが
ボランティアで案内してくれますが、
いつ出会えるかは全く分かりません。
三日か三ヶ月か三年か。
とにかく待つしかありません。
生活費は自己負担ですので、
それなりの蓄えをしておきましょう。
運良く出会うことができたら、
とにかくがむしゃらに追いかけてください。
原付よりも少し速いくらいのスピードですが、
持久力はありませんので、意外と捕まります。
一旦捕まると、そこからはさすが無償の愛。
静かに横たわり、そっと目を閉じます。
さあ、むしりましょう。
胸の白い部分は、耳かきに付いているフサフサとして
使用できますので、ついでにむしってください。
すべてむしりきると、ニワトリくらいの大きさになります。
もう用済みですので、そっと逃がしてやりましょう。
村の長に羽根をおすそわけし、
再度得体のしれない液体を飲んだ後に、とうとう帰国です。
交通費は自己負担ですので、その分は残しておいてください。
ボランティア協会本部に赤い羽根を届け、
すべての任務が完了します。
交通費、宿泊費、食事代などの経費はすべて自腹です。
報酬はもちろんありません。
どこかに名前を公表することも一切ありません。
これぞまさにボランティアの最高峰。
あなたの無償の愛をお待ちしています。
書き手 山田