『鬼』

(給与)時給千五百円
(勤務地)地獄
(資格)金棒を持てる方

安全大国と呼ばれた時代もすでに昔の話。
ここ数年、犯罪件数は増え続け、
地獄に送り込まれる人数は
増加の一途をたどっています。
みなさんもご存知のとおり、
地獄は、針地獄、熱湯地獄など、
いくつかのコースに別れています。
このコースの入り口に立ち、
警備を担当する「鬼」を募集しています。

主な仕事内容は、門の前に金棒を持って立ち、
コースを間違えないように誘導する、
という簡単なものですが、
なにぶんやってくるのは悪いやつらばかり。
死んでしまったうえに地獄に送り込まれるわけですから、
かなり荒れ狂っています。
コースもよく間違えますし、
ズルを企むやつらも後をたちません。
悪いやつら同士のトラブルは時々あるようですが、
さすがに金棒を持った鬼に
わざわざケンカを売ってくるようなことはありませんので、
その点はご安心ください。

年齢制限はなく、特別な資格も必要としていません。
ただひとつ、面接のときに「金棒テスト」があります。
持つことができさえすれば採用なのですが、
ここで約九割の方が不採用となってしまいます。
がんばってください。

採用が決まったところで、制服が支給されます。
本物のトラの毛皮を使用した高級パンツで、
サイズはLLかXL。
ダボッと履くのが鬼流です。
上半身は、もちろん裸。
そして裸足。
ツノはまず一本からのスタートです。
研修期間が終わると、もう一本追加されます。
金髪茶髪大歓迎。
さらにパーマをかけておくと、鬼らしさがアップして
大変好感が持てますが、強制はしません。

体の色は、自ら選択することはできません。
決めるのは、リーダーである閻魔様です。
面接時に個々の性格を見極め、
冷静なタイプは青鬼に、
情熱的なタイプは赤鬼に、
その間のどちらでもない方は、
残念ながら肌色のままです。

研修期間は一ヶ月。
鬼らしい乱暴な言動、ガサツなたちふるまい、形相、
などを訓練します。
指導にあたるのは、鬼界トップクラスの監督。
一度教えたことを間違えようものなら、
たちまち金棒をふりおろされます。
サングラスをかけ、缶ビールを片手に金棒をふりまわす、
文字通りの鬼監督。
しかし研修最後の日には決まって涙を流す、
人情味あふれた鬼でもあります。

研修期間が終わり正式な採用になると、
ツノが倍になるほか、さまざまな優遇が受けられます。
なかでも大変好評を得ているのが、
地獄経営の福利厚生施設「鬼ケ島リゾートランド」です。
鬼になると自動的に会員になることができ、
勤務時間百時間ごとに、優待券が一枚支給されます。

「鬼ケ島リゾートランド」は、
小笠原諸島の南西に位置する小さな島で、
年間を通して初夏のようなさわやかな気候。
島のなかには、全室オーシャンビューが自慢のリゾートホテルのほか、
ミニゴルフ、テニスコート、ゴーカートなどの遊技施設が充実しています。
どこまでも続く青い海、青い空・・・
まさに天国にいちばん近い島、と言えるでしょう。

ただ、ビーチで遊んでいたりすると、
ときおり、イヌ、サル、キジを引き連れた若い男が、
とくに理由もなく襲撃にやってきます。
その際は本物の鬼が対処しますので、
にわか鬼のみなさんは、係員の誘導に従って、
すみやかに避難してください。

本来ならば、減っていくべきである鬼の数ですが、
残念ながら需要は増すばかりです。
興味を持たれた方は、いますぐ履歴書をお送りください。
ただし、経歴に少しでもウソをつきますと、
すぐさま舌を抜かれてしまいます。
くれぐれもご注意ください。

書き手 山田