『急募!カブを抜いてください!』

(給与)時給千円+自社カブ
(期間)カブが抜けるまで。
(資格)力持ち。

とにかく人手が足りません! 
そして急いでいます!

庭の畑に大きな大きなカブができたのです。
カブは土の中で育っていますので正確な数値は不明ですが、
自宅が少し傾きかけていますので、
相当なものだと予想されます。

まずは父がカブを抜こうと、葉っぱの根元をつかんで
「えいや!」
とひっぱったのですがビクともしません。
そこで父は母を呼んで、自分をひっぱってくれと頼みました。
しかし大きなカブはピクリとも動きません。

次に、息子の私が母をひっぱることに。
それでも全く抜けそうにないため、
私はおじいさんとおばあさんを呼んで、
自分をひっぱってもらいました。

そこに母方のいとこと、父方のいとことはとこが
応援にかけつけてくれました。
彼らを私の甥がひっぱり、それから甥の義理の母、
甥の義理の母の兄、その内縁の妻と続いています。 

全員で力をあわせ、
「うんとこしょ、どっこいしょ」
とかけ声も威勢よくひっぱり続けているのですが、
一向に抜ける気配がありません。
かれこれ十日間もこうしています。
その間にもカブは土の中で成長をつづけているようで、
日増しに負担が重くなっています。
もう体力も限界です。
近隣の親戚も出し尽くしました。
家族会議を行った結果、
「他人を雇う」ことで意見が一致しました。

家族会議は、もちろんカブをひっぱりながら行われたわけですが、
「他人を雇う」と同時に、
もうひとつ重大なことが決定いたしました。

それは「会社設立」です。
扱う商品はもちろん「カブ」。
それもこの「大きな大きなカブ」です。
これだけの大きなカブは見たことも聞いたこともありませんので、
既に一社独占企業であります。

加工品も考案しました。
大きな大きなカブを、小さく小さく刻み、
塩に漬けてピンク色に染め、おかずのアクセントにするのです。
取り引き先は、主に弁当屋。
弁当屋がこの世から消えることはありませんので、
カブの取り引きは絶対安泰と言えるでしょう。

社長は父、秘書は母、専務は私、いとこまでは社員、
その他は契約社員としました。
甥の義理の母の兄の内縁の妻だけは、
本人の希望もあり、パートタイマーになりました。
完全なるファミリー経営を目指し、
長野の大学に進学した弟にも
「支部長になってほしい」
と打診したのですが、
「まずは卒業」
とのことで断られました。

アカの他人である皆さまに、まずやっていただく仕事は、
もちろん「カブを抜く」ことであります。
なにしろ、この大きな大きなカブを抜かないことには、
取り引きするものが何もなく、会社の設立もままなりません。
年齢制限や特別な資格、経験などは一切問いません。
とにかく、カブをひっこぬくことが肝心なので、
できるだけ力持ちを希望します。

アルバイトからのスタートになりますが、
親戚をしのぐ働きをしていただけた場合には、
社員としての採用もありえます。
ゆくゆくはフランチャイズ展開も視野に入れていますので、
アカの他人といえども、チャンスはいつ訪れるか分かりません。

カブが抜けさえすれば、会社の経営が軌道に乗ることは間違いなし。
私たちファミリーが目指すのは、もちろん「株の上場」です。
カブがこれだけ急成長しているのですから、
わが株式会社のカブも急上昇することでしょう。
カブが抜けたあかつきには、おいしいカブはもちろん、
自社カブもみなさんにおすそわけするつもりです。

とにもかくにも、まずはこの大きな大きなカブを抜かないことには、
事業は何ひとつ進まず、公正な取り引きも実行されません。
いま、こうしている間にも、カブは土の中でますます巨大化しているのです。

アカの他人の力持ち!
至急ご連絡ください!

書き手 山田